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2017.04 久しぶりに私の小さなHanashi



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ここ数年にしては遅めの桜咲く4月10日。



岡山から雨模様の博多駅に新幹線で戻った夕暮れ


駅を出て直ぐに


コンコンコツコツコツザザッ


と言う耳馴れない音が耳に入って来た。


僕には少し危なっかしくも見えるのだが


実にしっかりと迷い無く歩を進めている女性の白杖の音。


多くはないが少なくもない夕刻の人波が


近づくとササっと小さく破れ連なる。


それは正に黄のポツポツのある川の流れに


逆らって進む様でハラハラ観入る光景。


手元のスマホのキーに伏せ目で向かって来る人も


白杖が触れんばかりすんででかわす


ハラハラ



30秒ほど後だろうか


自分の見方の甘さをおもい知る


後ろを向いて立ち止まっている人の近くで白杖は小さくゆっくりゆっくりと


まるで手で優しく探っているかの様にゆっくり動いて


やがて女性も立ち止まったのを見て思わず溜めていた息が出た。


少し離れて信号待ちの数人の女性のグループに


そっと黄の道をちょっと空けていただける?


と小さく小さく声をかけると


2~3人がピョンと動いたかと思うと


また白杖がゆっくり優しく探りながら前に進む光景に


私の心はざわざわ。


やがて信号が変わろうとする頃


斜め前で小さな光景を見ていた


高校生なのか小柄な男の子が


黄の川から横断歩道に渡る先に居た数人の人に


白杖の女性を知らせてくれたおかげで


道を空けてくれたのだ。


横断歩道には黄の川がないが


信号の音と人の足音


それに歩道のゼブラの小さな段さえも


大切な情報なのだと


私に教えてくれている様に感じた。



我慢できず高校生の彼に


「君は優しいねっ」


と思わず声をかけた


私に小さく微笑んで


「いいえっっ」


とだけ応えて人の川に消えた。


少し目を離し振り返ると


横断歩道を確実に難なく渡り切る女性の足元に、小さな水溜りが


靴の半分くらいが浸ってしまっていた。



小さな光景の後に重く呵責の念が


大粒の雨の様に心に叩きつける。





私が見過ごしている


社会で流されている恐らくほんのちょっとの事が


誰かを苦しめている。


申し訳なくも足元に目を落とすと


辛うじて濡れずに済まれた事で救われた思い。


変わらぬ様にホテルの工事現場の前を右手へ歩き進む彼女を見送ると


バス停で狭くなった黄の川の先で待っている人が


さっと左右に破れる光景があった。


一刻も早く水溜りを


直さねば、そして心を正さねば。




HIRO KIMURA

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